米国では、喫煙人口が下がらないために女性の肺がんが急増しているが、これを除けば皮層がんがもっとも増えている。
皮膚がんの多発が議会で問題になったときに、ホーデン内務長官は「サングラスと帽子を忘れず、日焼けどめクリームを厚く塗ることを勧める」と答弁して話題になった。
スウェーデンは79年にフロンガスを使用したエァゾール製品の製造と輸入を禁止、81年にはノルウェーもこれにならった。
一方、欧州共同体(EC)も、エアゾール用フロンガスの使用量を、81年末までに76年実績から30パーセント減らすことを決めた。
だが、日本はフロン、とフロンVの生産設備の増設を凍結するにとどまった。
この一連の各国の規制で、フロンガスの排出量は一時は国によって20〜40パーセントも減少した。
ところが、電子部品の洗浄用や発泡スチロール製造など、次々と新しい用途が開発されるにつれ、82年ごろから再び生産が急上昇し始め、84年には規制以前の水準に戻ってしまった。
国連環境計画(UNEP)は、81年に「オゾン層保護条約策定のための第一回専門家会議」を開催して、国際的な規制の準備を始めた。
その後、南極での相次ぐオゾン量減少の観測結果、さらに人工衛星によるオゾンホールの確認で、国際世論は一挙にフロンガス規制へと盛り上がった。
85年3月に「オゾン層の保護に関する条約」(通称、ウィーン条約)が締結され、オゾン層保護のために国際協力や調査研究を推進する原則だけが決まった。
日本は、10カ国が批准した9月末になってやっと批准した。
同条約は同じ年の111月29日に発効した。
条約を受けて、具体的な規制を定めた「モントリオール議定書」は、2年後の87年9月にモントリオールの会議でまとまった。
加盟国は、1986年の消費量を基準にして、1998年までに5種の「特定フロン」を段階的に50パーセント減らすことを定めている。
議定書に基づく削減は、89年7月一日から開始された。
一部の先見的な学者によってその15年前に警告されたフロンに今後の課題だが、この条約化の過程で開発途上国側からの反発も強かった。
とくに、これから経済的に離陸しようとしているブラジル、インドなどが、規制が厳しくなると今後の工業化に支障をきたす、と警戒したためだ。
その代表が中国だ。
今世紀末までに「一世帯に一台の電気冷蔵庫の普及」を国家目標に掲げている。
もし現在のタイプの冷蔵庫が普及するならば、膨大なフロンを使うことになる。
他の途上国でも、工業化によってこれからフロンの本格的な消費が始まろうとしている国が多い。
同議定書では、先進国の生産量は98年までに半減しなければならないが、開発途上国はこの規制を10年間先延ばしにしてもよいことになっている。
あるいは、人口一人当たり年0・3キロまで使用してよい、という特例措置も設けられている。
いずれも、条約に加盟しようとしない開発途上国を勧誘することを目的としている。
だが、これを1000年に人口が13億人になると推定される中国に当てはめると、1119万トンまで使用できることになる。
これでは日本がもっとも使用した年の倍以上にもなる。
現在でこそ、途上国のフロン消費量は先進国の1パーセントほどだが、中国などが本格的に消費を始めたら、フロンの国際規制が何の意味もなくなってしまう。
89年3月に開かれた「オゾン層を救うロンドン会議」で、中国の首席代表はこう演説した.「深刻な地球環境の問題を引き起こしたのは先進国の責任だ。
これまでエネルギーや化学物質を使い放題使いながら、そこで得た利益を環境保護に向けようとしなかった。
先進国の責任で『オゾン層保護基金』をつくって、代替物質を開発して開発途上国に提供せよ」インドもこれを全面的に支持して、このような議定書は南北格差を固定するものである、と厳しく先進国を批判した。
さらに、代替品や回収再利用法ができたとしても、その技術を独占するのは先進国で、ますます格差は開くばかりだとして、中国提案の基金で先進国から途上国に無償で代替品の製造技術やその他の技術を提供すべきだ、と主張した。
この南北問題をどう解決していくかが、今後の大きな課題になりそうだ。
というのも、条約議定書の発効後、オゾン・トレンズ・パネルなどから、オゾン層の破壊が全地球規模に進んでいる実態などが報告され、今世紀内の半減ではとてもオゾン層は守れないとする悲観的な意見が強くなってきたためだ。
89年5月にヘルシンキで開催された第一回目の同議定書締約国会議では、「先進国は2000年までにフロンガスの使用を全面的に禁止する」という決議が採択された。
世界は当面、全面的禁止に向かつて進むものとみられる。
これを受けて、各国のメーカーはフロンの代替品開発やフロンを使わない電子部品の洗浄方式や噴射方式の研究にやっきとなっている。
だが、すでに大気中に放出されたフロンガスは1000万トンを超える。
成層圏にたどり着いて、オゾン層の破壊に加担したのはこのうちのわずか一割ほどでしかない。
残る大部分がこれから10年以内に到達するのだ。
今世紀内にフロン使用量を全廃したとしても、最新のNASAのモデルでは南極のオゾンホールは今後50年以上も続くと予測している。
私たちの世代は、子孫にいかにひどい贈り物をしてしまったのだろう。
地球環境の破壊がどんな形で私たちに降りかかっているのだろうか。
ここで繰り返し強調したように、まず、一見関係のなさそうな「自然災害」という形で現れているに違いない。
焼き畑や伐採、酸性雨などによる森林の広範な破壊は、地球上のいたるところで洪水や干ばつ、雪崩やがけ崩れ、山火事や土壌流失などの引き金となっている。
そして、最終的には農業を蝕み「食糧不安」という形になって顕在化する。
すでにハアフリカやインド亜大陸、中央アメリカなどではこの段階まできている。
もっとも、目につかない破壊もある。
成層圏から北極・南極、ヒマラヤ山頂から深海底まで、日常の食品から母乳までの化学物質汚染は、知らない間に私たちの健康を蝕んでいる。
がんや先天異常、アレルギーや精神障害の多発は、環境汚染と切っても切れない関係にある。
熱帯林の焼失とともに、人の目に触れることもなく絶滅している野生の動植物は、その価値さえ定かでないままに永遠に失われている。
さまざまな形で語られてきた地球環境は、ここにきて気候変動という「究極の環境破壊」の入り口にさしかかった。
400万年の人類の歴史の中で、地球との関係はかつてない危機的状況にある。
これから、人類を挙げての総力戦となるだろう。
それがむずかしいとなると、さらに重苦しい気持ちで13世紀を迎えねばならない。
今後の地球環境の救済を考えるときに、おそらく次の5つがその対策の柱になると思われる。
これは国際条約や国内法によって、人間側の活動を抑え込んでいくことを意味する。
「オゾン層の保護に関する条約」や「モントリオール議定書」はその典型的なものであろう。
今後、それが二酸化炭素による地球温暖化防止や熱帯林の国際取引規制といったものに次々に広がっていくことは避けられない。
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